大自然とカウボーイ
ブログをリニューアルして、更新する意欲が湧きやすいようにえいがのニッキと題しました。
映画について考えることを、映画好きと名乗るにはまだまだ素人な人間がメモしていきます。時々ドラマについてもメモしていきたいです。
ひとつめの記事は高校生のときに一度観たっきりで、「良い映画だった」という無味無臭の感想とともに頭の隅に置いていた作品について。
『ブロークバック・マウンテン』
(2005年、アメリカ、アン・リー監督作品)
(出展:ブロークバック・マウンテン - 作品 - Yahoo!映画)
もう10年以上前の作品なんだ、こわい。
一度観たっきりの映画をなぜいま引っ張り出したのかというと、つい最近ジェイク・ギレンホール主演の『ボストン・ストロング ダメな僕だから英雄になれた』(この副題はどうなんだろう)を観て、「ジェイク・ギレンホールってやっぱり良い役者さんだなぁ。そうだ彼の出演作を見直してみよう折角Netflix入ってるし」というとても安直な感想を抱いたからです。
それで、わぁ懐かしいと思ってこの作品から観たんだけれども、「アレ!この映画ってこんなに凄まじいものだったっけ!?」と衝撃を受け、その勢いそのままに綴っているところです。
<簡単なあらすじ>
舞台は1963年の夏、アメリカ、ワイオミング州。2人の若いカウボーイが、ブロークバック・マウンテンで羊の放牧を行う季節労働者として雇われる。
牧場の仕事を転々とし日銭を稼ぐイニス(ヒース・レジャー)と、ロデオ乗りのジャック(ジェイク・ギレンホール)。
ブロークバック・マウンテンの大自然に囲まれ、2人きりで過酷な仕事に耐えるうちに、いつしか互いに友情を抱くようになるが、ある夜、一線を超えてしまう。
2人だけの秘密にしようと再会の約束をしないまま山を降り、イニスは元々婚約していたアルマ(ミシェル・ウィリアムズ)と、ジャックはテキサスで出会ったロデオクイーンのラリーン(アン・ハサウェイ)とそれぞれ家庭を持つ。
しかし、4年後のある日、イニスの元にジャックから手紙が届く…。
<メモ>
母からカウボーイ好きの遺伝子を受け継いだので、カウボーイというだけでワクワクドキドキするんだ。
とりあえず、この映画を同性愛を描いた話だからと敬遠するのであれば、ひじょうに、ひじょうにもったいないということを言いたい。
これは単なるゲイのラブストーリーではなくて、青春映画であり、上質なヒューマンドラマであり、普遍的な愛のお話である、というのが個人的な見解です。
「あのとき、あの場所が自分のほしい全てのものだった。でも時を巻き戻す術はなく、その場所はもうなくなってしまった。残っているのはあのときの気持ちの残り香だけ」
という風な映画だと思うんです。
こういうと、なんかちょっと、スタンドバイミーみたいじゃね?ね。
以下、極力ネタバレをしないように、どんな映画なのかを書いてみます。
主人公のイニスは、幼い頃に両親をなくし、兄姉と助け合いながら生きてきた苦労人。
ぶすーっと背中を丸めて、ボソボソと低い声で話すその姿から、大変だったであろう彼のこれまでの人生が透けて見えてくる。
いうて婚約者はいるし、羊番の仕事に応募したのも結婚のためなんだけれど、たぶんそれにもそこまで舞い上がってない。一緒に暮らしてきた兄も姉も結婚して、家に居場所がなくなり、まぁ自分もそろそろ結婚するかってな感じ。
夏中割り当てられた職場で、焚火の音を聞きながら、仕事の道連れなジャックにそんな自分の事を語ったら、ここ2週間くらいで一番よくしゃべったんじゃないのか、と言われる。
こんなに話したの1年ぶりくらいかも、と答えて、それまで不機嫌そうに俯いてばかりいたイニスが劇中で初めて笑う。
そのうちにジャックとの間に友情を超えた絆が生まれても、このブロークバック・マウンテンでは、誰の目も憚ることはない。
自分が誰に対して何を想おうとも、何をしようとも自由で、自然は全て受け入れて、ただ流れて行ってくれる。
だけど山を降りたらそうはいかない。
社会は自分たちを許さないし、許されるとも思ってない。
あの鮮やかな大自然とは対照的な、モノクロの生活に戻っていかなければならない。
でもそれは仕方のないこと。どうしようもないこと。
だから普段はじっと耐える。自分の想いを隠したまま、苦しい現実にも逃げ出さずにじっと耐え続ける。
妻もいるし、守るべき娘もいる。
ジャックとはたまに会って、あの頃の気持ちを思い返せれば万々歳。
それ以上を望むことが身を滅ぼすのであれば、我慢するしかない。
今までずっと我慢してきたんだから大丈夫、
なんてことはないわけで、そんな生活にも綻びが出始める。
家庭にも、ジャックとの関係にも暗雲が立ち込める。
誰かに対して確かに持っている愛が、他方では誰かを不幸にする。
愛とは柔らかく優しいものでもあり、ときにとても凶暴な武器になる。
皆がそれぞれに愛のかたちを持っているからといって、皆がしあわせになるわけではない。
さて、2人とそれを取り巻く人々の行く末やいかに。
と、こう書いてみると、青春映画かつ普遍的な愛の映画に聞こえてきません?駄文なのはほっといて。
厳しい現実の中で、ただ誰かに対する愛を持ち続ける苦しさ、切なさ、美しさ。
これは、そのようなものが、アコギ一本で紡がれる音楽と、雄大な自然をバックに丁寧に丁寧に語られる、とてもとても綺麗な映画なのです。
確かに同性愛はこの映画のキモであり、ただひとを愛することが、同性というだけで命懸けの時代があったというのは悲劇です。
だけどこの映画から得られるものは、それだけではないので、敬遠しないでほしいな。
あと、俳優陣の演技がとても素晴らしいので、一見の価値ありかと!
ダークナイトのジョーカーにひけをとらないヒース・レジャーに、瞳が饒舌すぎるジェイク・ギレンホール、子どもを抱えて泣く姿が心にぐさぐさくるミシェル・ウィリアムズに、前半の可愛いカウガールから後半への落差がすごいアン・ハサウェイ。
ヒースとジェイクの乱暴すぎて最早殴り合いにすら見えるキスシーンはとくに鬼気迫るものがあります。
(出展:ブロークバック・マウンテン - 作品 - Yahoo!映画)
(出展:ブロークバック・マウンテン - 作品 - Yahoo!映画)
ヒース・レジャー、ご存命だったら今ごろ40手前くらいか。
彼の演技がもう見れないのかとあらためて思い、残念な気持ちでいっぱいです。
初っ端の記事から真面目で恥ずかしいことを書きすぎたので、水責めに合うジャックことジェイク・ギレンホールの動画を貼って終わります。
Water War with Jake Gyllenhaal - YouTube